婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「ただいま、きゃっ――」
靴を脱いだ瞬間、あとから入ってきた貴晴さんに背後から抱き上げられ、驚きと共に短い悲鳴を上げてしまう。
「貴晴さん!?」
私を横抱きにした貴晴さんは口元に薄らと笑みを載せ、そのままリビングのソファに私を降ろす。
そのとなりに寄り添うようにかけると、すぐに横から私を抱き寄せた。
「俺が行くまでの間、何もされなかった?」
耳元に寄せられた貴晴さんの声は、どこか心配を滲ませている。
あんな場面に遭遇させてしまって、余計な気を使わせてしまった自分の不甲斐なさにハッとした。
「大丈夫です。何もなかったですし、本当に」
「ちょっと、取り乱しそうだった」
「え……?」
「さっき、場所も状況も関係なく掴みかかりそうになってた」
温厚な貴晴さんの口から出てきたと思えない言葉を聞いて、もぞもぞと自分から体を離す。
すぐ間近で顔を合わせると、貴晴さんはいつも通り優しい表情で私を見つめた。