婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「ごめんなさい……私が、ちゃんとしっかりと対応できていれば、そんな余計な心配してもらわず済んだのに……」
「里桜が謝ることじゃない。でも、俺の心配してる通りだって、これでわかってくれたでしょ?」
「……?」
小首を傾げると、貴晴さんは私の頬を指で撫でた。
「里桜は可愛いから、誘いたがる男はたくさんいるって、前に言ったこと」
「そんなこと……今日のは、からかわれただけですし、そういうことでは」
「はいはい、自覚がないのも困りものだね。そんなことより、話が大分違うことになってるけど、何この可愛らしい猫は」
「へっ……?」
貴晴さんは私の姿を改めてまじまじと眺めて、答えを求めるように視線を合わせてくる。
今になって慌ててつけっぱなしの猫耳を外そうと手をかけると、それを阻止するように手首を掴まれた。
「あの、これは……予定だった着ぐるみが手違いで届かずに、芳賀さんにこの衣装をと渡されまして……」
包み隠さず事情を話すと、貴晴さんは「ハァ……」とため息を吐き出した。