婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「どこを触られた?」


 そう訊いた貴晴さんの手が太腿に触れ、体がぴくっと大袈裟に跳ねた。


「っ、あの、貴晴さん?」


 あからさまに動揺する私を前に、貴晴さんは太腿に触れる手を滑らせていく。

 囁くように「どこ?」と繰り返し、私の鼓動は暴走し始めた。


「そっ、そのあたりです!」


 もうさっき少し触れられた部分なんてよくわからない。

 それよりも貴晴さんの温かい手の感触に全身が熱を上げていく。


「上書き、しておかないとね」


 癒すように撫でられているだけなのに、私はひとり変な気分になってしまう。

 もじもじと脚を震わせると、貴晴さんの手はすっと離れていった。


「それにしても、可愛い猫」


 改めて頭のてっぺんからまじまじと私の姿を見つめて、貴晴さんは目尻を下げる。

 ソファの背もたれにそっと体を押し付けられて、迫る貴晴さんの端整な顔に胸がぎゅっとなった。

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