婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「来年からは、あのイベントには里桜は携わらないように手を回さないとダメだな」
「え……」
「俺の心配を減らすためにもね」
そんなに過保護にならなくてもと思うけれど、心配をさせてしまった手前口は出せない。
もっとしっかりしなさいと、心の中で自分に強く言い聞かせた。
「私も……心配お掛けしないように、もっとしっかりします」
そう言った私を、貴晴さんは優しい眼差しでじっと見つめる。
突然、顎の下を指でこしょこしょとくすぐられた。
「可愛い猫ちゃん、こっち向いて」
急にふざけた調子でそんなことを言い、貴晴さんは私の顔を覗き込む。
どきりとした時には迫った貴晴さんに唇をキスで塞がれていた。
甘く包み込む優しい口付けが深まっていくと、自然と唇は割られてしまう。
更に深くなっていくキスに、無意識のうち貴晴さんのスーツを掴む手に力が入っていた。
軽いリップ音を響かせてキスから私を解放した貴晴さんは、私の耳元へと濡れた唇を近付ける。
「これ以上は、自制が効かなくなりそうだから……」
そう言い残して、貴晴さんはひとりソファを立ち上がった。
蕩けるキスで思考が正常に機能しなくなってしまった私は、しばらくソファに座り込んだままその熱にぼんやりと酔っていた。