婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「そうか、それは良かった。安心したよ」
今日も朗らかな洋司さんは健在。
二ヶ月ぶりというのもあり話が弾む。
最近のこの施設での話題や、私の新しい仕事の話で会話は途切れることなく盛り上がった。
「ところで、ふたりは籍はまだ入れてないのか」
洋司さんの言葉に、どきりとしてしまう。
「はい。もう少し落ち着いてからということで、彼女と決めています」
「そうか」
お見合いの席を用意した洋司さんは、早く結婚という運びになってほしいのかもしれない。
何も口を出さず、穏やかに頷いてくれている洋司さんだけど、本心は早くいい報告を受けたいと思っているのではないかと勝手に思ってしまった。
「じゃあ、嬉しい報告を楽しみにしているよ。欲を言えば、ひ孫の顔が見たいなぁと思ってるんだがね」
冗談でも言うように、洋司さんは「わはは」と笑ってみせる。
愛想笑いをするように合わせることしかできなかった自分が、なんとも心苦しかった。