婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「洋司さん、お変わりなく元気そうで良かったです」
「久しぶりに里桜に会えて、すごく嬉しそうだった。ありがとう」
「いえ、そんな……私も洋司さんに会いたかったので」
帰りの車内。
洋司さんの昼食の時間となり、近々また遊びにくると約束をして施設をあとにした。
あっという間の時間で、お互いに話し足りなかったように思える。
「ごめんね。会長が急かすようなこと口にして」
「え……?」
「籍のこととか、子どものことまで」
どこか気まずそうに貴晴さんは苦笑する。
「いえ! そんなことはないです」
「そう? それならいいけど……会長があんな風に言うのは、仕方ない部分もあるんだ」
「……?」
「以前に、大病を患ってね。今も、定期的に施設から通院はしているんだけど……実は先月、緊急入院した時期があったんだ」
「えっ……そうだったんですか?」
さっき会ったときは、そんなこと全く感じさせないいつもの元気な洋司さんだった。
心配をかけないために黙っていたのかもしれない。