婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
この先、貴晴さんとの話が上手く進んで、結婚をすることになったり、子どもができたなんて報告ができる日がきたら、きっと喜んでくれるに違いない。
口に出しては言えなかったけど、密かにそんな想いが過った。
「ありがとう」
信号で車が停車すると、貴晴さんの手が膝の上にある私の手を掴み取る。
私の手を取った貴晴さんの手を、暇をしている方の手でそっと包み込んだ。
「今日はこのあと、里桜は何かしたいことはある?」
「このあと、ですか?」
「うん。せっかく仕事休みにしているし、まだ時間はたっぷりあるから」
そう言われて見た腕時計の時刻は、お昼十二時を回ったばかり。
何かしたいことと訊かれて、「えっと……」と考え込む。
「じゃあ、とりあえずお昼を取って、それから俺の行きたいところにまず付き合ってくれる? それまでの間に考えてくれればいいから」
「はい、わかりました」
貴晴さんの行きたいところって、一体どこだろう……?
窓の外に流れていく景色を眺めながら行き先をあれこれ予想していた。