婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 挨拶を済ませると、すぐに奥の衣装室に通された。


「わっ……すごい……」


 そこには、数多くのドレスが飾られていた。

 純白のウエディングドレスからカラードレス、デザインドレスまで、その種類の多さにキョロキョロとしてしまう。


「素敵……」

「そう言ってくれて良かった」


 背後から両肩に手が置かれる。

 振り向くと、貴晴さんは穏やかに微笑んで私の顔を覗き込んだ。


「さっき会長のことであんな話したばかりだったのに、こんな、結婚式の前撮りみたいな場所に連れてきたりしちゃったから」


 ウエディングフォトを撮影するスタジオというのは、この衣裳部屋に入れば一目瞭然。

 さっきの話に追い打ちをかけるようで、貴晴さんは私がここに連れてこられて困ると思ったのだろう。


「いえ、そんなことないです! こういうところ憧れていたので」


 こういう場所は一生縁がないと思っていた。

 ウエディングドレスも、こういうスタジオで誰かと撮影するなんてことも……。

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