婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「ちょうどお仕度できました」
そんな声が聞こえて振り向くと、そこには貴晴さんの姿があった。
スタッフの女性が部屋を出ていき、代わりに貴晴さんが入ってくる。
近付いてくる貴晴さんの姿に、振り向いたまま動けなくされたように釘付けになっていた。
ちょっと待って……素敵すぎてやばい……!
私が着替えをしているあいだに、貴晴さんも撮影衣装に支度をしてきたらしく、現れた姿はシルバーグレーのタキシード姿。
普段見ているスーツの姿もいつも素敵だと密かにドキドキしているのに、この特別感は心臓が驚いて暴走したまま落ち着かない。
「思った通り、いや、思った以上だな……」
部屋へと入ってきた貴晴さんは私のすぐ背後までやってくる。
椅子にかけたまま前の鏡へと向き直ると、素肌の肩に両手がそっと置かれた。
「綺麗だ。このまま飾っておきたいくらい」
そんな風に言われてしまうと、みるみるうちに顔が赤面してきてしまう。
「そんなこと……」とふるふる横に首を振ると、貴晴さんは背後から覆いかぶさるように私の首に両腕を回した。
「ほんとに、可愛い」
肩に唇が触れて、キスが落とされる。
鏡越しにその光景を見て、私の赤面は耳まで広がっていた。