婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 しかし、ふたりがかりで探してもバッグは見つからない。

 本格的に盗難に遭ってしまったのが濃厚になって、探すことを辞め立ち尽くしてしまった。

 どうしよう……バッグごとなくなるなんて……。


「お客様、大変申し訳ありません」


 呆然としているところに、一緒に探してくれていた男性が声を掛けてくる。

 意識を取り戻したように顔を上げ、またその端整な顔にこんな時にも関わらずどきりとしてしまった。


「パーティーに参加していただいて、このような事態を起こしてしまったことは、こちらの責任です。すぐに警察に被害届を出させていただきますので」

「い、いえ! 手荷物を置きっぱなしにした私が悪いんです。探していただきまして、申し訳ありません。ありがとうございました」


 どこだろうと、出先で貴重品管理を怠った自分の責任。

 持って席を立っていれば、こんなことにはならなかったのだ。

 今更そんな後悔でいっぱいになりながら、「お騒がせしました」とぺこりと頭を下げる。

 次にすぐ頭を悩ませたのは、今からどうするかということだった。

 お財布もスマホも、無くなったバッグの中。

 丸ごと無くなってしまった今、私に帰宅する手段はない。

 ちょっと待ってよ、どうしよう……。

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