婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
里桜の大きな瞳がわずかに大きさを増す。
そして勢い余ったように「それって――」と口を開いた。
黙って彼女から出てくる言葉を待つ。
一瞬戸惑ったように瞳を揺らし、意を決したようにこっちを見上げた。
「貴晴さんの、初恋が……私だなんて言うんですか?」
里桜の顔には、〝そんなわけない〟〝そんなの信じられない〟とはっきり書いてある。
だけどそれと同時に、みるみるうちにまた頬が赤らんでいた。
「そんな……貴晴さん、今までたくさん恋愛してきてるでしょ?」
里桜にはそんな風に見えているのかもしれない。
でも今振り返れば、人に話せるような付き合いなんてしてきていない。
どれも薄っぺらくて、感情を突き動かされるような経験は何一つなかった。
「恋愛なんて胸張って言えるものは、今思えばしてきてない。そういう相手に出会えなかったこともあるけど、俺もいい加減だったんだと思う」
「貴晴さん……」
「そういうことに気付けたのも、里桜に出会ってからなんだ。里桜が、全部教えてくれてる」