婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「たか――あっ、社長……!?」
「お疲れ様」
「お疲れ様、です……」
なんと、突如現れたのは貴晴さん。
今朝、先に会社に出勤していくのを玄関で見送って、私は少し遅れてこの横浜の会場に直接出勤したのだ。
今日の予定は特に聞いていなかったけど、私がここのイベントに出向くのを知っていたら、あとで顔を出すと言ってくれるはずだ。
「どうされたんですか? 今日、こちらに来る予定だったんですか?」
「うん、実は仕事を少し調整して時間を作ってたんだ。里桜がイベントに立つって知ってたから」
「そうだったんですね……」
「大丈夫? 欠勤が出たって聞いたから」
「はい。特にトラブルも起きてないので、このまま順調にいくかと。もうすぐ助っ人の先輩も到着すると少し前に連絡が入っているので」
「そっか。しっかり運営してくれてありがとうね」
普段通り、穏やかで優しい笑みを見せてくれる貴晴さんにホッとする。
まだまだ駆け出しで未熟だけど、少しでも会社のためになっていたらいいなと、盛り上がる会場を見つめて切実に思った。