婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~

◇side Takaharu



「一緒に住むことになった日から、今日でちょうど百日……」


 焦るな。そう自分に言い聞かせながらも、心の中で決めていたことがあった。

 百日一緒に過ごしてきて、彼女の気持ちを手に入れる。

 初めての感情ばかりで、何が正解で間違いかもよくわからない。

 それでも、彼女への想いを膨らませ、それを少しづつ伝えてきたつもりでいる。


「百日……」


 どこか驚いたような里桜の声。

 もうそんなに経ったのか。それとも、まだ百日しか経っていなかったのか。

 どう思って、この百日間を感じているのだろう。

 手の中にある小箱を差し出し、上部のふたを持ち上げる。

 中にあったものを目にした途端、里桜の瞳が大きく開いた。


「これ……」


 驚きで揺れる瞳が、箱の中から俺の顔に向けられる。

 以前、髪も乾かさずリビングでぐっすり眠ってしまっていた里桜の手を借りて、左手の薬指のリングサイズを測らせてもらっていた。

 そのサイズでオーダーした、エンゲージリング。

 里桜の指先に似合うデザインを相談して、完全フルオーダーで作ってもらった。

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