婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
ほとんど一瞬に近い時間。
だけど、絶対に互いの顔は認識できたはずだった。
それなのに、貴晴さんには私を見て驚く様子も、慌てて誤魔化す様子も、もちろんここに入って来て何か弁解することもしない。
ただ目を逸らし、そのまま前を通りすぎていった。
開いたままの目が、瞬きすることを忘れる。
ガラスの先一点を見つめたまま、微動だにできない。
一体、これはどういうこと……?
貴晴さん、今の人は誰なの……?
もう頭の中で考えて処理をする機能がめちゃくちゃに破壊されていて、思考が上手く働いてくれない。
ただ、今見た貴晴さんとお腹の大きな女性の姿が目の裏にべっとりと貼りついている。
しばらくその場から動けず、ハッと気づいたときにはラテは冷めて冷たくなっていた。