婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
その後、どうやってマンションまで帰ったのか記憶にない。
気付けばリビングのダイニングテーブルの前に立っていて、もちろん寄ろうと思っていたケーキ屋には立ち寄らなかった。
今朝、いつも通り優しい笑顔で今晩のことを「楽しみにしてるね」と言ってくれていた貴晴さん。
それなのに……仕事に出かけていったと思ったら、知らない女性と手を繋いで一緒にいて、しかも、彼女はお腹の大きな妊婦だった。
全く理解ができない。
貴晴さんは、私とお見合いをして、結婚を前提にここに一緒に住み、エンゲージリングまで渡してくれている。
じゃあ、あの女性は一体……?
『まぁいるだろうな……なんなら数人いるとみた』
いつだか、照井さんが言っていた冗談のような言葉が頭を過る。
そんなはずない。
貴晴さんはそんないい加減なことをする人じゃないって、出会ってこれまで接してきた中で私はたくさん見てきたし知っている。
だけど、今日見たものは一体どう説明すればいいのかわからない。