婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「お母さん……? 私」

『里桜、久しぶり! ちょっと、元気にやってるの?』


 久しぶりにかけた実家への電話。

 母親は相変わらずの調子で通話に応じる。

 私が石川へ帰るバスターミナルにいるとも知らず、「貴晴さんとは上手くやってる?」と訊いた。


「うん……あのさ、ちょっと、そっちに帰ろうかと思って」

『え? 石川に帰ってくるの? 貴晴さんも一緒に?』

「ううん……そうじゃなくて、ひとりで」

『ええ? どうしてよ』

「どうしてって……ちょっと色々あってだよ」


 帰ってから話せばいい。だけど、何をどう話せばいいんだろう……。


『で、いつ帰ってくるのよ?』

「うん、今夜の深夜バスに空きが出たみたいで、それで乗って帰る。あと三時間もすればくるから」

『え、何よ、それまで待ってるの? この寒いのに』

「大丈夫。そういうことだから、よろしくね」


 いろいろと追及される前に話をまとめ、通話を終わらせる。

 目にした画面には、今の通話中に入ってきた貴晴さんのメッセージが表示されていた。

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