婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
【里桜、今どこにいるの?】
【電話、気付いたらかけ直して】
メッセージとは別に着信も何件も入っていて、そのまま何も触らずバッグの中にスマホをしまい込んだ。
気付いたら、実家に帰ろうと手配に動いていた。
あのまま家にいれば、じきに貴晴さんが帰宅するかもしれない。
そう思ったらいても立ってもいられなくなって、考えるよりも先にマンションを出てきていた。
私が出ていったあと、貴晴さんは帰宅して、私がいないことに連絡を入れてきているのだろう。
昼間、あんなところで会ってしまったのに、貴晴さんはどんな顔をして私と会う気なのだろうか……。
私には、貴晴さんと顔を合わせて何か話す勇気がない。
そんなこと怖すぎて、できるはずないと思った。
高速バスの待合室で、ひとり予約をしたバスの時間を待つ。
ようやくあと数十分でバスに乗車できる時間が迫ってきたとき、静かな待合室の自動ドアが開いた。
「里桜!」