婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
◇side Takaharu
毎年特に気にも留めていなかったクリスマスイブという日が、今年は初めて楽しみだと思えた朝だった。
柄にもなく一日浮かれ気味で、早く里桜の待つ家に帰りたいと思っていた。
軽い足取りで帰った部屋には灯りがなく、里桜の姿もどこにもなかった。
その代わりにダイニングテーブルの上に渡したエンゲージリングがぽつりと置いてあって、ただ胸騒ぎを覚えた。
『じゃあ今夜は、お家でクリスマスやりませんか?』
朝、そう微笑んで提案してきた里桜が、まさか……いや、そんなはずない。
焦燥感に襲われながら里桜のスマホに着信を入れるも、何度かけても通じない。
メッセージアプリへ送った何件ものメッセージも既読にならず、ただ不安と焦りは増すばかりだった。
心当たりもないままマンションを飛び出し、当てもないまま目を凝らして車を走らせた。
その間にも折り返しの連絡はなく、手あたり次第行方を掴めそうな先に連絡を入れる。
そして里桜の実家にも連絡を入れた時、やっとお義母さんから有力な情報を手に入れた。