婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
やっとの思いで見つけた里桜は、俺がどうして迎えに来たのか理解に苦しむ顔をしていた。
里桜の行動を責めるつもりも、追及して追い詰める気もない。
ただ、何があってそんな行動を取ったのか話してほしかった。
『私、この目でしっかり見ました……貴晴さんが、お腹の大きい女性の手を引いて、一緒に歩いているところ』
里桜の証言に、当たり前だけど全く身に覚えがなかった。
周囲に妊婦の女性はいないし、第一に里桜以外の女性の手を握るなんてことは有り得ない。
でも、里桜がそんな嘘をつくはずもなく、俺の顔を見間違うはずもない。
そして〝似ている〟程度では、こんな強行に出ないだろう。
そこまで頭の中でまとまって、そういうことか、と合点がいく。
里桜に必ず待っていてほしいと伝え、部屋を出てすぐスマホを手にした。
『――はい』
「今どこだ」
『おいおい、久しぶりにかけてきて、元気か?のひと言もなしか』
「今そんなことを聞いてる場合じゃないんだ、許せ」
自分と同じような声のトーン。
軽い口調は相変わらず健在だ。
『家にいるけど、それがどうかしたのか』
「わかった。そのままそこから動かないでくれ」
向こうがまだ何か言っていたけど、そこで通話は強制終了。
自宅にいるなら好都合だと、急いで車に飛び乗った。