婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
身も心も通じ合って
何がどうなっているのかわからないまま、しばらく涙を流し続けた。
必ずここで待っていてほしい。貴晴さんはそう言ってマンションを出ていってしまった。
まさか、昼間見たあの女性と共に戻ってくるのだろうか。
そんな恐ろしい展開が頭を過り、目の前がぐらぐらと崩れ落ちていくようだった。
これから、どうなってしまうのだろう。
この先のビジョンが全く見えてこない。
やっぱり、このままここで大人しく待っているなんて――そう思った時、玄関で物音が聞こえた。
どくんと、心臓が不吉なことを予感するように鈍い音を立てる。
向こうから近付いてくる気配に、覚悟を決めるように息を呑んだ。
「え……」
見えた姿に、一瞬理解が追い付かなかった。
どういう、こと……?
貴晴さんと、そのとなりに……ドッペルゲンガー?
単純にふたりいるという表現がしっくりくる光景だった。
「里桜……俺の双子の兄」
「どーも、晴斗です」
双子……たっ、貴晴さんが双子……!?