婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「あっ……」
ふたりきりになった部屋でつい声が出てしまい、警察官を見送った成海さんが「どうかしました?」と振り返る。
「あ、その、自宅に戻るのに、警察の方に交通費をお借りしようと思っていたことを忘れてて……今言えばよかったと。あ、でも、今から寄って相談してみます」
婚活パーティー内での盗難とはいえ、こうして警察を呼んでもらったり、物凄く迷惑をかけてしまった。
もう何度目かわからない頭を下げ、「お世話になりました」とお礼を口にする。
「親切にしていただいて、すごく助かりました。ありがとうございました」
成海さんが立つ目の前までいき、またぺこりと頭を垂れた時――。
「っ……!?」
突然、なんの前触れもなくやんわりと手を取られた。
ハッとして顔を上げる。
その先にあった成海さんの整った顔が微笑を浮かべていて、ひとりでに鼓動が大きく打ち鳴りだしてしまった。
「あ、あの……」
「警察に助けてもらおうと思う前に、頼るなら私を頼ってほしいな」
「え……でも、そんなわけには」
「そんなわけには? いかないってこと?」