婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
この優しい腕にも、大好きになった安心する香りにも、もう包まれることはないのだと思っていた。
自らも両手を回し、広い背中を抱き締める。
またこうして触れ合えたことに、涙は更に流れ落ちる。
「里桜、ごめん……」
「謝るのは、私の方です。あんな言い方して……」
「知らなければ当然のことだから。俺が、もっとちゃんと話しておけば良かったんだ」
抱き締められる腕の中で、大きく横に首を振る。
貴晴さんは私の涙が落ち着くまで、ずっと腕の中で私を落ち着かせてくれた。
「さっき、里桜の話を聞いて……それってまさか、って思って。晴斗は、しばらく東京にいなかったから、いつ戻ってきてたかも知らなくて」
気分がやっと落ち着くと、貴晴さんは私を冷たい床から立ち上がらせ、ソファへと座らせてくれる。
晴斗さんのことを口にした貴晴さんは、フッと息をつくように笑みをこぼした。
「だから、里桜が俺と間違って見かけなかったら、まだ東京には帰ってないと思ってたと思う」
「そう、だったんですね……」
それにしても本当に瓜二つだった。
双子という人たちが今まで周囲にいたことがなかったから、こんなにも似ているのかと並んだふたりを見て驚いてしまった。