婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「それは驚いた」

「え……?」

「可愛らしくて謙虚で、きっと周りの男性が放っておかないだろうなと思ったから」


 両肘をカウンターについて、小首を傾げた顔を組み合わせた手に載せた成海さんは、微笑を浮かべて私を見つめる。

 こんな素敵な方にお世辞でも褒められて、優しい眼差しで見つめられたら、私の経験値的に心臓が壊れたように鳴ってしまう。


「そっ、そそ、そんなことは全く!」


 間が持たなくなってきて、またすぐにグラスに口をつける。

 こういうところがダメなところだってわかっているのに、直そうと思って直るものでもないから困ってしまう。


「そうかな? 里桜さんが気付いていないだけで、想いを寄せてる男は多いと思うけど」

「有り得ないです! そんなこと……」


 職場でも男性スタッフとは仕事のことですら話すのは苦手だし、きっと不愛想でやり辛い人間だと思われているはず。

 そんなだから、今まで私なんかに告白してきた人なんて誰一人いない。

 気付いていないとかではなく、本当にいないのだ。


「有り得るよ。だってほら、ここにもいるよ?」

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