婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「へ……?」


 聞き間違えをした?

 そう思って、置いたグラスを両手で包み込んだまま、成海さんに目を向ける。

 すると、にこりと端整な顔に極上の笑みが浮かぶ。

 やっぱり、からかわれている?

 困ってしまってバッと顔を正面に戻すと、グラスから膝に下ろした手を突然そっと掴み取られた。

 温かい手のぬくもりに、どっどっと、心臓の動きが加速していく。

 顔面にも熱が集まってきて、赤くなっているのが確認しなくてもわかった。


「あなたはどうやら、私の運命の人のようだ」


 何かドラマか映画でも観ているような、画面のこっち側にいるお客のような気分で成海さんを見つめていた。

 こんな胸キュンなセリフ、いつか言われてみたいなって、思いながら……。

 でも、そんなことが今、目の前で起きている……?


「あなたに一目惚れしてしまったんだ。だから、こうして誘った」


 こんな素敵な人が、私に……?

 うそ……信じられないよ……。

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