婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「……って、いきなりそんなこと言われても引くかな。ごめんね」
「いえっ、そんなんじゃなくて、引いたとかじゃ、なくて……」
勘違いをされては申し訳ないと思い、咄嗟に否定をする。
その勢いですぐに言葉を続けた。
「ごめんなさい。私の身に起こってることとは、思えなくて……」
成海さんは急かすことなく、私の話に耳を傾けてくれている。
その余裕のある態度に、また更に好感を覚えた。
「もし……そんな風に、想ってもらったのなら、嬉しいです」
今までの人生で一番、勇気を振り絞って口にした言葉だった。
こんな私に好意を持ったなんて言ってくれる人がいたこと。
それも、目を合わせるのも恥ずかしくなってしまうような、こんな素敵な人が……。
もう、この一刻の幸せでも構わない。夢でもいい――。
「良かった。拒否されなくて」
私の頭の上にまた大きな手が載って、優しくぽんぽんと撫でてくる。
こんな素敵な人に好意を寄せられて、拒絶するような女子はいるのだろうか……?
ドキドキと依然として落ち着かない鼓動が、となりの成海さんに聞こえてしまっているのではないかと心配になってくる。