婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
舞い込んだお見合い話
近くの小学校から子どもたちが賑やかに下校していく時間、「おはようございます」とスタッフルームへと入っていく。
スキニーデニムとラフな大きめTシャツの私服から、制服のポロシャツとジャージパンツに履き替え、ロッカーの内側の鏡を見ながらいつも通り髪をポニーテールに縛った。
「ふう……」
鏡の中の自分を見つめ、つい小さなため息が漏れ出てきてしまう。
今朝、高級スイートで目覚めたとは思えない、いつも通りの日常の風景。
今日もこうしてユニフォームに着替えて、今からお年寄りのお世話をする一晩が始まると思うと、昨日の出来事はやっぱり夢のように感じる。
思い返すだけでも、体の熱が上がる。
無知で未熟な私には、何もかもが濃く刺激的な夜だった。
窓の外が白んでくるまで、甘い時間は緩やかに続いた。
成海さんはこんな私を何度も求め、朝方になるとまるで恋人のように腕に抱いて眠りについた。
酔っていたことと、いろいろなことが一晩に立て続けに起きたことで疲れていたけれど、私に眠りにつける余裕はなかった。
穏やかな寝息が聞こえてくると、彼を起こさないように温かな腕からそっと離れた。
ベッドを抜けて手早く着替え、無一文の状態でホテルと後にし、近くの交番で昨日の一件の事情を話し、交通費をお借りしてまだがらがらに空いている早朝の電車に飛び乗った。