婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
夕食の介助と片付け後、着替えや洗面の介助で担当の部屋を回っていく。
いつも通りの仕事をこなしながらもついぼんやりとしていて、その様子に洋司さんが「どうかしたのかい?」と声を掛けてくれた。
「ああ、いえ、なんでもないです。ごめんなさい」
「何か、困っていることがあるなら話してごらん」
仕事前にあんな話をされてから、業務中もいろいろなことに気が散漫していた。
どの人が私との仕事が嫌なのだろう。もしかしたら、ここにいる全ての人が集まってクレームを言いに行ったのかもしれない。
そんなことばかりが気になって落ち着かなかった。
「それとも、何か、嫌なことでもあったのかな?」
「…………」
「里桜ちゃんがそんな浮かない顔をしていることなんて、初めてのことだよ」
優しい言葉を掛けられて、お茶を淹れる手がつい止まってしまう。
本当は異動のことは言わない方がいいのかもしれない。
だけど、あと二週間もすればここから姿を消すことになる。
洋司さんは利用者さんの中でも私にとても良くしてくれたし、何も言わずに立ち去ることはしたくないと、人として素直にそう思った。
「洋司さん……私、ここの施設から異動することになったみたいです」
いつも通りの仕事をこなしながらもついぼんやりとしていて、その様子に洋司さんが「どうかしたのかい?」と声を掛けてくれた。
「ああ、いえ、なんでもないです。ごめんなさい」
「何か、困っていることがあるなら話してごらん」
仕事前にあんな話をされてから、業務中もいろいろなことに気が散漫していた。
どの人が私との仕事が嫌なのだろう。もしかしたら、ここにいる全ての人が集まってクレームを言いに行ったのかもしれない。
そんなことばかりが気になって落ち着かなかった。
「それとも、何か、嫌なことでもあったのかな?」
「…………」
「里桜ちゃんがそんな浮かない顔をしていることなんて、初めてのことだよ」
優しい言葉を掛けられて、お茶を淹れる手がつい止まってしまう。
本当は異動のことは言わない方がいいのかもしれない。
だけど、あと二週間もすればここから姿を消すことになる。
洋司さんは利用者さんの中でも私にとても良くしてくれたし、何も言わずに立ち去ることはしたくないと、人として素直にそう思った。
「洋司さん……私、ここの施設から異動することになったみたいです」