婚前溺愛～一夜の過ちから夫婦はじめます～

　聞き慣れないワードが出てきて、ぱちぱちと目をしばたたいてしまう。

　お見合い……？　私が!?


「ちょっと待って、きてるって、どこからそんな話。うち、お見合いとかする家柄じゃないでしょ!?」

　父は会社員、母は専業主婦。至って普通の一般家庭なのに、お見合いとはどういうことだろう。

　そういう話は、上流階級の人々の話だと認識している。


『それが、さっき東京から突然訪ねてきてね、日野さん、とかいう方の使いの人だったんだけど……』


　日野、さん……？

　全く知らない名前だ。


「え……どういうこと？　全く話が読めないんだけど」

『どうしても里桜とお見合いをしたいと挨拶にこられたの。その、日野さんという方のお孫さんらしいんだけど、里桜より五つ年上の三十歳で、お写真もいただいてるんだけど……』

「……だけど？」

『ねえ、やっぱり詐欺か何かかしら!?　こんないい話、突然降って湧いてくるわけないわよね？』