婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
ホテル二階にある仏蘭西料理店に向かうと、奥にある個室の席へと通された。
ミシュラン三ツ星がついているというレストラン。
その特別席でテーブルを囲む。
椅子が外され、洋司さんは車椅子ごと席へとつく。
車椅子のストッパーをかけた成海さんは、洋司さんのとなりの席へと腰を下ろした。
洋司さんの向かいには私の両親がつき、その横に私が座ると、ちょうど向かいは成海さんという位置になった。
「改めまして……紀平さん、この度は遠いところをご足労いただきましてありがとうございます。里桜ちゃんも、ありがとう」
洋司さんの言葉に、父が「あの……」と口を開いた。
「日野さんと、里桜は……?」
この様子だと、両親は私が働いている施設に洋司さんがいるということを知らないようだ。
「そうですね、そこからお話しないといけませんね」
黒服のスタッフがグラスに乾杯の一杯目をついでいくと、洋司さんが「では先に……」とグラスを手に取る。
それぞれがグラスを手にすると、洋司さんが「今日のこの席を祝して、乾杯」と微笑んだ。