婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「へっ……!」
あの、日……。
そう言われて、忘れもしないあの夜の出来事が鮮明に蘇る。
その途端、顔面に熱が集まり火照るのを感じた。
またこんな風に成海さんと再会してしまうなんて思いもしなかった私には、あの日のことを思い返すだけでも刺激が強すぎる。
「あの、それは、ですね……あれ以上、ご迷惑をお掛けするわけにはと、思いまして……」
答えると、成海さんはフロントガラスの先を見ながらくすっと笑った。
「里桜さんらしい言い分だね。でも、迷惑だなんて思ってたら、はじめから一晩一緒にいたりしないよ」
成海さんの言い分はごもっともかもしれない。
だけど、あの時の私にそんなことを考える余裕は一ミリもなかった。
今だって、どう答えたらいいのか、言葉を返したらいいのかわからなくなってきている。
「もし、今回のお見合いの話がなかったら、俺は直接里桜さんに交際を申し込むつもりでいた」
「え……」
「だから、こうして双方の家族が集まって、公認で関係を進められることになったのは、俺にとっては好都合だった」