婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 あの日の夢は日をまたいで、まだ続編があったのだろうか……?

 次々と成海さんから告げられる言葉に、私の頭の中ではそんなことを考えてしまうほどだった。

 現実としては到底受け止めきれない内容。

 だけど成海さんは、そんな私の心情などお構いなしに募る疑心を晴らしていく。

 気が付けば職場である施設の目の前の公園が見えてきて、成海さんは「ここで大丈夫かな?」と車を停車させた。


「あ、はい、すみません。ありがとうございました」

「仕事、異動になったって聞いた。ここの寮も出ることになるんだよね?」

「そんなことまで、ご存じだったんですね……」


 この間、ついぽろっとこぼしてしまったから、洋司さんからすでに聞いていたのだろう。


「異動先は、寮が完備ではないらしくて、今新しい住まいを探しているところなんです」


 早いところ決めて入居しないと、引っ越しも考えたらギリギリだとバタついてしまう。

 できれば異動初日には万全の体勢で出勤したい。


「そのことなんだけど、今の職場を退職するって考え、里桜さんにはないかな」

「え……?」

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