婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
隠された異動命令の真実
「ちょちょ、ちょっと待った!」
チョコチップが散りばめられたクリームが載るチョコレートドリンク。
そこにささる黒いストローをくるくるとしながら、日菜子は対面する席から身を乗り出すようにして声を上げた。
「え、ちょっと待って、順を追って説明してくれないと。どうしたってそんなことになるの!? 相手、参加者じゃなくて、主催者ってどういうことよ!?」
「えっと……それは……」
世間は夏休みも終わりの、八月最後の週末、土曜日――。
暑さの和らぐ夕方の代官山は、窓の外を眺めていると多くの人が行き交っている。
昨日の夜勤前に【明日とか、暇?】と日菜子からメッセージが入ってきて、お茶でもしようという約束をしていた。
直接会うのは、あの婚活パーティー以来のこと。
会って他愛ない近況報告をし合う中で、職場で異動命令が出たことを話す流れでお見合いをしたことを話した。
さらっと「そのお相手の人が、あの婚活パーティーを主催してる会社の方で……」と付け足すと、日菜子は若干パニックを起こして会話を中断させた。