婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「実は日菜子と別れたあと、あの会場で盗難に遭ってたことがわかって……」

「盗難!? え、それは大丈夫だったの?」

「あ、うん。後日、現金は抜き取られてたけど、バッグごと見つかって戻ってきたから大丈夫。お財布にも、一万円も入ってなかったし。それで、その方にはその時にお世話になって……」

「そっか……。で、お世話にになって? それで、どうやったらお見合いにまで話がいくわけ?」

「あ、それは、私の職場の利用者さんのお孫さんがそのパーティーの時にお世話になった方だったっていう、偶然だっただけなんだけど……」


 複雑な関係性なだけに、こんな説明で話が通じるのか自分でも疑問になってくる。

 でも、日菜子は聞いた話を整理するように目を上向けながら、じっと何かを考えている顔を見せた。


「じゃあ、お見合いの話が来る前にたまたまあの婚活パーティーで出会ってただけで、もし出会わなくても、その後お見合いをして結果出会ってたってことだよね?」

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