婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「いいな。なんかすごい素敵」
「えっ? そ、そんなこと……」
「それに、納得できちゃった。里桜がそう思ったから、一晩一緒にいたってこと」
そう言った日菜子は「話してくれてありがとう」と微笑む。
「あー、いいな。私もそういう運命の相手に会ってみたい……」
「そういえば……あの時の彼は? 一緒に帰った」
日菜子が素敵だと狙っていた、塩顔の彼。
あの日、一緒に会場を去っていってからどうなったのだろう?
「あー、だめだめ。ぜっんぜん駄目だった」
「え、そうなの?」
「うん。あのあとさ、ふたりで飲み直しになったんだけど、もう話してみると無理だったわ。だいたいが自慢話か悪口かでさ、話し全然面白くないの。あの調子じゃ顔がタイプでも無理だわ」
「そっか……」
小さく溜め息をつき、日菜子はストローをすする。
「また婚活パーティー出直しだよ。いいなぁ、里桜は。まさか付き合いで行ってくれた里桜がその先で出会いがあったなんてね。しかも、お見合いする相手だったなんて、ドラマみたいな話だよ」
本当に日菜子の言う通りだと思う。
そこで出会って、ひと時の恋に落ちた相手が、お見合いをする相手だった。
それも、洋司さんのお孫さんだったなんて、未だに信じられない部分もある。