婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「じゃあ、これから今の仕事も辞めてその彼と一緒に住むことになるんだよね?」

「うん……そういう話にはなってるけど……」

「そっかそっか。じゃあ、しばらくバタバタしそうだね」


 にこりと笑う日菜子を目に、話したかった続きの話が切り出せなくなっていく。


「引っ越しはいつ?」

「引っ越し業者がくるのは明日なんだ。一応、社員寮使えるのが今月いっぱいだから」


 成海さんとのお見合いのあと、職場には急遽退職の申請を出した。

『退職しても構わない』なんて言われていたこともあり、特に引き留められることもなく話はまとまった。

 自分なりには一生懸命にやってきた仕事だったから、あっさりと全てが終わってしまったことはなんだか悲しかった。


「じゃあさ、生活が落ち着いたら遊びに行ってもいい?」

「あ、うん。それはもちろん」

「やったー! じゃあ、また近況知らせてね」


 ワクワクした様子で、日菜子は「引っ越し祝い何にしようかな~」と楽しそうに声を弾ませた。

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