婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
告げられた内容に絶句していた。
まさか、そんなことで自分にとばっちりがくるなんて思いもしない。
「里桜ちゃんが目障りだと、頼み込んだのだろう。そこまで裏が取れたから、里桜ちゃん側からここを離れるように、貴晴との見合いを申し込んだ」
「そう、だったんですか……」
「もちろん、里桜ちゃんにはいずれうちの孫と見合いをしてほしいとお願いするつもりでいたんだ。それが、今回のことで早急に話を進めようとなって、こんな急なことになってしまった……」
洋司さんは「申し訳なかったね」と目尻の皺を深めた。
「いえ、洋司さんが謝られることは何もないです。むしろ、私の方が謝らないと……嫌な話に巻き込んでしまって、ごめんなさい」
「いや、里桜ちゃんが謝ることこそ筋違いだ。私も、今回のことでここを去ることに決めた。いい機会だったよ」
「洋司さん……」
知り得た事実と申し訳なさに肩を落とす私を見て、洋司さんは手を伸ばしとんとんと横からだらりと下りた私の腕を叩く。
「でもやっぱり、みんな里桜ちゃんがいなくなってしまったことを悲しんでいるよ。それは、里桜ちゃんの仕事ぶりと、何より人柄がそうさせているんじゃないかな」