婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
こんなマンションがこの世に存在するのかと、到着してから全てが信じられない。
自分の生きてきた世界とはまるで別世界なのだ。
「セキュリティも万全のところを選んだから、安心して住んでもらえると思うんだけど」
「はい……」
今まで住んでいた社員寮は、特にオートロックのシステムもなく、鍵一つで部屋を守っていた。
しかし、都会の一等地にあるこの高級マンションは、なんと四重のロックだという。
コンシェルジュ付きのエントランスで二重。エレベーターもカードキーで階数指定。更に玄関ドアのロックと、万全のセキュリティだ。
容易に無関係者が立ち入れない造りになっている。
この中に住まいを持っている住人は、成海さんのように会社代表だとか、そういったかなり上流階級に君臨している人ばかりなのだろう。
「共有スペースには、ジム設備とかいろいろあるみたいだから、興味があったら見てみるといい」
「え、じ、ジムって……まさかスポーツジムですか?」
「うん。入居者専用のがね。早朝から結構遅い時間まで使えるみたいだよ」
マンション内に、ジムって……。
驚きっぱなしのまま到着したのは、エレベーターで最上階の六階。
エレベーターを出ると、エントランスロビーと同じように白い大理石の床と白い壁の空間が現れる。通路は左右にのびていた。