婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 四十畳はあると思われる開放的な空間。奥には一面のガラス窓で明るく、緑が多く覗いている。

 その光景は表すなら〝ここはマンションなの?〟というものだった。

 建物の中の一角とは思えない、戸建ての高級住宅とでもいうのだろうか。

 窓のすぐそばまで近付くと、ウッドデッキになったバルコニーには奥にジャグジーまでついていた。

 そして、リビングにはすでに今すぐ生活が始められるように家具や家電が入っている。


「どうかな……? 気に入ってもらえた?」

「あの……すごすぎて、なんか……」


 上手く言葉にまとまらない。

 自分の人生には想定外すぎて、感想すらままならない状態になっている。


「こんなすごい場所に住むことが、信じられなくて……」

「そうなの? もうすぐ、里桜さんの荷物もちゃんと運ばれてくるよ」


 フッと笑いながらそう言った成海さんは、「コーヒーでも飲む?」とキッチンへと入っていく。


「あっ、私が淹れます!」


 と追いかけるようにキッチンに向かって、その広さと豪華さにまた目を奪われた。

 私が住んでいた社員寮のキッチンは一体なんだったんだろうと思ってしまうほどの規模の違い。

 アイランドキッチンになっている広々としたキッチンは収納も多く、海外製の食洗器まで完備されている。

 私の使っていたあのキッチンは、おままごと用だったんじゃないかと錯覚するものだった。

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