婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
婚約して、いずれ結婚をするという話でこれからここに一緒に住むことになった。
そして私たちは、幸か不幸か、そうなる前に一夜を共にしてしまっている。
だけど、改めて今の関係になって、この一つのベッドで夜を共にすると言われると、また一から気持ちの整理が私には必要だった。
私の問いに、成海さんは微笑を浮かべる。その表情にはどこか困ったような色も浮かんでいた。
「一緒には嫌?」
「あっ、いえ、その、嫌とかでは、なくて……その……」
そう、嫌なわけではない。
私が単に緊張して、心臓が持たなそうで、心の準備ができていないだけの話なのだ。
「何も、恥ずかしがることもないと思うけど……俺はもう、里桜さんの隅々まで知っちゃってるからね」
さらりとそんな恥ずかしいことを口にされて、ぼっと頬に熱が灯る。
そんなあからさまな私を見て、成海さんは不意に両手で私の頬を包み込んだ。
正面から背を屈めて顔を覗き込まれる。
「あ、可愛い。赤くなってる」
「は、恥ずかしいです!」
視線をうろうろさせて、できる精一杯の抗議文句を言ってみるけど、成海さんは楽しそうに微笑むだけ。
全く効果がなくて、赤い顔は耳までを染め上げた。