婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「って、あんまりいじめると嫌われちゃうからね」なんて言って、成海さんは固まる私から手を離す。
「婚約破棄されても困るし」
「そんなことは……」
「わかったよ。里桜さんが一緒でもいいって思えたら、ここで寝よう」
「え……」
「今まで使ってたベッド、引っ越しの荷物に入ってるんだよね?」
そういえば特に何も考えず、今まで社員寮の部屋で使っていたベッドも処分しないで運ぶ手配をお願いしていた。
「あ……はい。そのまま運んでもらっちゃいました」
「じゃあ、それは里桜さんの自室に運び入れてもらえばいいかな。そうすれば、寝慣れたベッドで眠れるだろうし」
成海さんは案外あっさりと別々に眠る提案をして、話をひとりまとめていく。
そんなタイミングでインターフォンの音が鳴り響いた。
「引っ越し業者が到着したかな?」
成海さんは踵を返してリビングへと戻っていった。