婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「ごめんね……まだ、会って三回目なのに」

「いえ、そんなことは……」


 小さく首を横に振る彼女を目に、自分に『焦るな』と念を押す。

 自分本位の考えだけでいけば、すぐにでも婚姻届を提出してしまいたい。

 書類上だけでも夫婦という関係になり、それからじっくりと彼女を愛していく。

 その日々の中で彼女の心も手に入れていけばいいと思うけど、それは完全にこっちの我儘だ。

 早く自分だけのものにしたい。
 手に入れて可愛がりたい。

 だけど、どうしたらいいのかわからない。

 自らがこんなに欲する相手に出会ったことが初めてで、俺はその方法を知らないのだ。

 今だって、初めての感情に戸惑っている。

 俯き加減で両手に包んだグラスの中身をじっと見つめる彼女へと、気付けば手を伸ばしていた。

 頬にかかる胸下まである長い髪を耳へとかけて横顔を露わにする。

 ぴくっと肩を揺らしてこっちを向いたその顔は、白い肌を仄かにピンク色に染めていた。

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