婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「良かった」
「あの……でも」
何かに戸惑うように、俺を見つめる彼女の瞳が揺れている。
微かに潤んだその目をじっと見つめ返した。
「本当に……私なんかで、いいんでしょうか……?」
思いもよらない問いに、彼女の手からグラスを抜き取る。
考えるよりも返事をすることよりも先に、頬に触れていた手で彼女を引き寄せていた。
近付く唇を許可なく奪う。
薄らと瞼を持ち上げた細い視界の中で、彼女の瞳が大きく開いているのを確認した。
突然の口付けから解放すると、耳元へ唇を寄せる。
「あなたじゃないと……里桜じゃないとだめなんだ」
「成海、さん……」
再び正面から目を合わせ、鼻先が触れ合う近距離で見つめ合う。
どうしたらあなたの全てが手に入るのか、俺はこれだけ頭を悩ませているのに。
そんな気持ちをぶつけるように、さっきよりも深く唇を重ね合わせた。