高校生マフィア
あたしの体は陸に支えられて自由は利(き)かなくて
つまり、あたしは陸に抱き締められてるわけで
いつもなら真っ赤になって飛び上がるのに、今はそんなこと頭に浮かばない
多分、それは
予想以上に陸の力が強くて
予想以上に陸の声が小さかったから
そして、あたしの今の心境(しんきょう)は、恋に一々反応できるほど安定してないから

「大丈夫じゃねぇだろ?1人で行くんだぜ?」
「…ぅ…ん」

とくん

とくん

静かに陸の心音(しんおん)が聞こえた
それが気持ちよくて、部屋の外に出たくなかった
本当は【行きたくない】気持ちが、押さえつけたのに、出てきそうだった

「…どーすんだよ」

「爽樹、何かあったら…どーすんだよ…っ」

ぎゅうっと、力が強くなって
陸の腕が交差する背中が痛くなってきた
でも、あたしだって、雪姫や陸の居る場所から敵の懐に飛び込みたくなかったから
痛いくらいは我慢できた

「うん……」


いやだな
出て行きたくないな
春樹にちゃかされても
雪姫に見つかっても
ずっとこうしていたい

強い力で束縛されていた方が
この場所から出て行けない理由になりそうだから



「でも…大丈夫」
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