高校生マフィア
何分か、同じ風景ばかりの廊下を歩いて、突き当たりで、くるりと春樹を振り返った

「ここで分かれる。必要以上のことは喋らないこと。危険になったら慧に通告すること」
「ハイハイ。俺は大丈夫っ」

また、ポケットに手を突っ込んでケラケラと笑った
全く…敵陣でどんだけ能天気なんだ…

「アンタが1番心配…」
「だぁーから俺は大丈夫だって!姫のが気をつけろよー」
「呼び方」
「バッ…ッカ…!!」

ピンヒールのヒールで、軽く春樹の足を踏んでやった

「ピンヒールはダメだろぉっ…」
「本気で気をつけてよ?」
「だーいじょぶっ」

親指を立てて私に突き出した春樹を無視して、方向を変えて歩き出した
本当に大丈夫なのかコイツは…

「雪姫っ」
「っ―――」






ばさっ。と、硬い灰色のジャケットが、私を後ろから包んだ
耳の後ろに、普段はうっとうしい春樹の長い髪の毛が当たった

何秒か、私を後ろから包み込んで、パッと離した

「気ー付けろよ?雪姫に何かあったら俺マジで困るし」
「…ッ////」

コイツは…
真剣な場所でなんてことを…!!
私が顔を赤くするなんて、滅多に無いことなのに…
コイツに顔を赤くするとは…不覚(ふかく)

バッと振り返った
声とは裏腹に、眉をしかめて泣きそうな顔をした春樹をフッと鼻で笑った

「心配してくれるのは嬉しいけど、自分の心配も」




「次に会うのは、談話室で」

振り返って走り出した
私も泣きそうな顔をしているのは、今更気づいた

< 134 / 170 >

この作品をシェア

pagetop