恋ごころは眼鏡でも見えない

放課後、真理ちゃんを待つ私の脳内では反省会が行われていた。


理由は昼休みの新山君だ。


午後の授業中考えた結果、

『高橋君の代わりに謝ってくれた新山君に、嫌味で返した私。その態度に新山君は怒って真っ赤になった』

という結論に至った。


嫌味で言ったつもりはないんだよ~。


「新山君…… ごめん」


独り言として呟く。


「小林さん?」


新山君がそばにいることに気づかず。


「うわあぁ! 新山君ごめん!」


ガタガタ騒がしく椅子から立ち上がり頭を下げる。


「え? え、なにが?」


「お昼、新山君が高橋君の代わりに謝ってくれたのに、なんだか嫌味っぽくなっちゃって……。怒ってるよね、ごめんなさい! 嫌味じゃないんだよ!? 本当に気にしてなくて……」


矢継ぎ早に言い訳をする。


「怒ってないし、嫌味だとか感じなかったけど……」


「怒ってない……?」


恐る恐る顔を上げる。


新山君はいつも通りの爽やかスマイルで、怒ってないよと言った。


「赤くなるほど怒って」


「ああー、それね」


新山君は私の言葉をさえぎるようにして言った。


「なんで高橋の代わりに謝ってんだって、気づいたんだ」


「朝、高橋が小林さんを呼んだあと、俺が小林さんに睨まれた気がしてさ。謝らないとって思って。」


「睨んでないよ!」


……あ、目を凝らしたからそれが睨んでるように見えたのかな?


「妹がキスプリ好きで、ライブとかよく行ってるんだけど」

「はぁ」

いきなり妹さんの話? 間の抜けた相づちを打ってしまった。

キスプリは人気男性アイドルグループだ。こんなイケメンのお兄ちゃんがいながら、アイドル追っかけてるのかぁ。なんか贅沢。


「目が合ったとか、自分に向かってファンサしたとか騒いでて」


あるあるだねー。新山君ファンクラブの方々もよく言ってる。


「妹のこと自意識過剰ーってバカにしてたんだけど、俺も同じじゃね?って。小林さんも高橋の方睨んでると思うし、」

「睨んでない!」

食いぎみでツッコむ。

「俺、自意識過剰だーって気づいちゃって……。すっごく恥ずかしい」


ちょっとおどけた口振りなのが、意外で、少し面白くて笑ってしまった。
本当に怒ってないようで安心した。
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