「ひねくれモノめッ!」
その後、顔を真っ赤にして事務所へ入った(逃げた)国山クンは、平常の顔に戻った頃、書類一式揃えて戻ってきた。
雇用契約書と、マンション(寮)の入居申請書、その他諸々だ。
もう雇う気満々じゃないですか。
「もう雇う気満々ですね、弘さん。」
「私の心の代弁をありがとうございます西辻さん。」
「別に、そんなんじゃない。無職は何かと大変だろ?あんたがすぐ働きたいなら、働かせてやるよ。ありがたく思え。俺はキッチンの様子を見てくる。」
そう言うと国山クンはキッチンへ行ってしまった。
私がゲームをあげた時の真似か、ツンデレ属性か・・・もう設定はお腹いっぱいだよ・・・
離れた場所の国山クンを見て、西辻さんはまた微笑んだ。
「弘さんは、本当にお優しい子でしてね。実はこの場所、元々は売れない個人の純喫茶だったんです。」
「そう、なんですか?」
「ええ。赤字で潰れかけていた個人店を、『まだこのコーヒーを飲みたいから』なんて理由を付けて買い取って、赤字を黒字に変え、チェーン店にまで発展させてくれたんです。」
「・・・もしかして、西辻さん・・・」
「ご想像の通りだと思いますよ。」
なるほど。西辻さんが国山クンに敬意を払う意味は分かった。
西辻さんが淹れたコーヒーの感想を、あんな、自分の事の様に喜べる国山クンは、相当にいい子なのだろう。
「このカフェ業態の社員は、実はワケありの人が多いんです。ほぼ全員、弘さんに雇われて、救われた人達です。ですから、人によっては神のように崇める者もいるのですよ。」
ほっほっほ、とキッチンの方を見て笑う西辻さん。
ちょっと待て、崇めるってなんだよ。
もう疲れて来たぞ私は・・・!!