死者の音〜最期のメッセージ〜

藍は、正直ホッとしている。このご遺体は肌が青くなっているだけでよかったと思っているのだ。水死体は他の死因による遺体と違い、本人の顔すらわからないほど変形してしまうこともある。そんな遺体を見れば、まだ医大生の大河は一生のトラウマを持ってしまうだろう。

「よかったな、医大生。水死体は壮絶な遺体状況になる場合もあるからな、死後の面会を遠慮させられる場合もあるんだよ」

如月刑事がそう言うと、大河は「えっ……」と呟く。彼は水死体を見るのは初めてだ。

「だって、ドラマとかでは……」

「ドラマと現実は違うの。長時間水に浸かり続けていると、腐敗したガスによって体が膨らんだり、首が取れてしまったりするわ」

「マ、マジですか……」

ショックを受ける大河を無視し、遺体は運ばれていく。おそらく、明日には解剖するだろう。

藍は、漆黒の夜空を見上げた。