ココロの好きが溢れたら


「行きたいところあるか?」


「うーん」


せっかくのハルとのお買い物。

でも、改めてそう聞かれると行きたいところが全く思いつかない。


ハルの行きたいところは?と聞いたら、ハルも思いつかないみたい。


なので、歩きながら気になったところに入ろうということになった。


「人多いな」


休日の昼間のためか、街は多くの人で賑わっていた。


ハル、人混み嫌いそうだよね。


チラリと隣にいるハルを見ると、想像していた通り眉間にシワを寄せている。


「あっ…ごめんなさいっ」


ハルを見ていて前を向いていなかった為、すれ違い様に肩がぶつかってしまった。


危ない、危ない…。

気をつけなくちゃ。



「なにしてんだ、お前」



ふと私の右手が大きくて温かいものに包まれた。


え…?


「離すなよ。逸れるから」



そう言って、ハルが悪戯っぽく笑う。


ハルと手を繋いでいる。


そう理解した時、私の心臓がバクバクと音を立て始める。


う、そ…。


嬉しい。

信じられない。


繋がれた手の温もりは感じるのに、心が追いついてこない。


「こ、子供じゃないもん。迷子になんてならないよっ」


「ははっ、どうだか」



どうしよう。

胸の音がハルに伝わってしまいそう。


でも…。



「っ……」



離したくない。

この温もりを感じていたい。



私は繋がれた手に少しだけ…ほんの少しだけ力を込めてハルの手を握り返した。



< 113 / 222 >

この作品をシェア

pagetop