ココロの好きが溢れたら
家までの帰り道、隣を歩く陽毬を見て思う。
陽毬はいつも笑っている。
今だって、俺の隣で楽しそうに。
俺は気の利いた言葉もかけられなければ、ずっとクライミングばかりやってきたため女子の扱いも分からない。
なのに陽毬はいつだって楽しそうに笑う。
だから、余計に頭に残っている陽毬の表情がある。
初めて会った時、俺が向けた拒絶の目に怯えた陽毬の顔。
あの時、陽毬が微かに震えていたのが分かった。
溢れはしなかったが、瞳が涙で滲んだのが分かった。
ズキン
まただ。
最近、陽毬のあの時の顔を思い出すたび胸が痛む。
なんだこれ。
胸が刺されたように痛い。