ココロの好きが溢れたら


あの時は、ハッキリと自分の意思で拒絶した。

「近づくな」と、俺が強く望んで拒絶した。

なのに、今はその時の行動に後悔している自分がいる。胸が痛む自分がいる。


あんなことがあったのにも関わらず、陽毬は俺から離れることもせず笑ってくれている。

ベッドで声を押し殺して泣くほどに傷ついたはずなのに、ちゃんと俺に想いを伝えてくれて、俺の想いを受け止めてくれて。


俺を変わらず、想い続けてくれている。


どれだけ傷ついただろう。

どれだけ辛かっただろう。


陽毬の事を考えるだけで、苦しくなった。


そんな事を考えていたら、無意識のうちに陽毬の手を握ってた。

陽毬が驚いたように俺を見る。


「ハ、ル?」

「車、危ねぇから」

「う、うん…」


恥ずかしさを隠すように言い訳をした。

本当は俺が繋ぎたかっただけ。


繋いだ陽毬の手は小さくて。

少しだけ冷たくて。


だから余計に、俺が陽毬を守ってやりたい、と。もう陽毬を傷つけたくはないと。


そんな事を心の中で思いながら、少しだけ握る手に力を込めた。


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